
ムルティカブスサビクワガタ
Dorcus multicavus Mizunuma, 1994
スラウェシ島産
1.はじめに
ドルクス属サビクワガタとしては珍しくスラウェシ島に産し、形状・質感ともにかなり異質。

緩やかにカーブしたアゴと、先がわずかに二又に分かれた平たいアゴ。これがめちゃくちゃかっこいいんですよね。
最近生体の流通はありませんでしたが、2025年春頃からまとまって入るようになりました。現地では普通種だそうです。入荷初期ちょ~~~高かったですね。どう見ても産卵簡単なので飼育品が出回り始めたら暴落すると思ってはいましたが、まさか野外品の段階で落ちていったとは…(苦笑)

高価ではありましたが、ぜひ飼育してみたかった種類なのでママサ産の野外品を入手。飼育したいと思った時が買い時です。

それと別件で、別の業者からフロンタリスネブト(という名のバクリネブト)を購入したのですが

???「フロンタリスネブトです。通してください。」
ネブト買ったらサビが届きました。約1/10の価格で草ァ!!この時期、紛れ込みムルティカブスが多発してたような…。

…というわけで、まったくイレギュラーな形でタナトラジャ産も入手。なぜか2産地体制で飼育を始めることになったのでした。
2.飼育記
2-1.2025年5月3日 産卵セット

♂がもったいない(いつもの貧乏性)のでペアリング。即パコでした。

2♀ともセット。タナトラジャ産は♂がいないので当然持ち腹です。マットに材埋め込みの、いたって普通のセットです。
2-2.2025年8月17日 割出

セット後1ヶ月ほどで幼虫が見え始めました。こちらは持ち腹セットしたタナトラジャ産。やはりドルクスサビは持ち腹成功率が高いように感じます。
それから2ヶ月後。

なんで長期間放置するかなぁバカなんじゃないの???
夏は忙しいんだ、許せ(言い訳)(定期)(やめちまえ)


2産地ともにどっさり採れました。2齢もちらほら混ざっているのでギリ耐え…ですかね。累代には困らなさそうです。見込みがなさそうな幼虫は、申し訳ないが多頭飼育中心での投入としました。
2-3.2025年10月~ 羽化

多頭飼育している子達から蛹化開始。

早い個体は2ヶ月で羽化してしまいました。残暑の頃かつ3齢割出なのでおかしくはないですね。

概ね24ミリ前後で終始。3齢割出という事実を加味しても思ったよりサイズが伸びませんでした。ドルクスサビは3齢割出でもまくってくれる子は結構いるんですが、今回は許されなかったです。
羽化掘り出ししてる時は野外最大が26.2ミリと勘違いしていたのでしょげていましたが、本当は23.6ミリでした。一応多くの個体が野外最大を超えてくれたことになります。まぁサビの野外最大サイズなんて、あってないようなものなんですがね。飼育過程がひどいこともあり、微妙な結果であることには変わりなし。
羽化後1~2ヶ月で活動を始める個体が多く、しかも2週間程度で16gゼリー半分を平らげる個体もちらほらいました。サイクルはかなり早そうです。
3.羽化個体紹介
面倒だったので、すべての個体を撮影してはいません。金太郎飴なので許してクレメンス
3-1.ママサ産
♂①24.4mm DM-M-WF1-01

2025年8月16日 恵栽園マット@500 初齢
2025年12月29日 羽化
♂②24.9mm DM-M-WF1-03

2025年8月16日 恵栽園マット@500 2齢
2025年12月29日 羽化
♂③24.6mm DM-M-WF1-06

2025年8月16日 恵栽園マット@500 2齢
2025年11月24日 羽化確認
♂④24.3mm DM-M-WF1-12

2025年8月16日 恵栽園マット@500 3齢
2025年11月24日 羽化確認
♂⑤25.7mm DM-M-WF1-13

2025年8月16日 恵栽園オオヒラタケ@800 2齢×2頭
2025年12月29日 羽化確認
蛹体重1.0g

最大個体。
♂⑥25.3mm DM-M-WF1-15

2025年8月16日 恵栽園オオヒラタケ@800 2齢×2頭
2025年12月8日 羽化確認
♂⑦23.7mm DM-M-WF1-16

2025年8月16日 恵栽園オオヒラタケ@800 2齢×2頭
2025年12月8日 羽化確認
♂⑧24.5mm DM-M-WF1-17

2025年8月16日 恵栽園オオヒラタケ@800 3齢×2頭
2025年12月8日 羽化
♂⑨23.9mm DM-M-WF1-19

2025年8月16日 恵栽園オオヒラタケ@800 3齢×2頭
2025年12月8日 羽化確認
♂⑩24.2mm DM-M-WF1-24

2025年8月16日 恵栽園マット@500 2齢
2025年12月29日 羽化確認
♂⑪25.2mm DM-M-WF1-25

2025年8月16日 恵栽園マット@500 2齢
2025年12月14日 羽化確認
♂⑫24.6mm DM-M-WF1-27
2025年8月16日 恵栽園マット@500 3齢×2頭
2025年10月28日 羽化
蛹体重0.9g
♂⑬24.6mm DM-M-WF1-28
2025年8月16日 恵栽園マット@500 3齢×2頭
2025年11月8日 羽化確認
♂⑭24.1mm DM-M-WF1-29

2025年8月16日 恵栽園マット@500 3齢×2頭
2025年10月24日 羽化

♀①21.3mm DM-M-WF1-02
2025年8月16日 恵栽園マット@500 2齢
2026年1月27日 羽化確認
♀②22.0mm DM-M-WF1-04
2025年8月16日 恵栽園マット@500 2齢
2025年12月29日 羽化
♀③21.7mm DM-M-WF1-05
2025年8月16日 恵栽園マット@500 2齢
2025年12月9日 羽化
♀④21.6mm DM-M-WF1-07
2025年8月16日 恵栽園マット@500 2齢
2025年11月24日 羽化確認
♀⑤22.0mm DM-M-WF1-08
2025年8月16日 恵栽園マット@500 2齢
2025年12月9日 羽化確認
♀⑥22.2mm DM-M-WF1-09
2025年8月16日 恵栽園マット@500 2齢
2025年1月27日 羽化
♀⑦22.4mm DM-M-WF1-10
2025年8月16日 恵栽園マット@500 2齢
2025年11月24日 羽化確認
♀⑧21.5mm DM-M-WF1-11
2025年8月16日 恵栽園マット@500 3齢
2025年11月24日 羽化確認
♀⑨21.8mm DM-M-WF1-14
2025年8月16日 恵栽園オオヒラタケ@800 2齢×2頭
2025年12月29日 羽化
♀⑩22.4mm DM-M-WF1-20
2025年8月16日 恵栽園オオヒラタケ@800 3齢×2頭
2025年12月8日 羽化確認
♀⑪21.8mm DM-M-WF1-22
2025年8月17日 恵栽園マット@500 2齢
2025年12月29日 羽化確認
♀⑫22.3mm DM-M-WF1-23
2025年8月17日 恵栽園マット@500 2齢
2025年11月18日 羽化確認
♀⑬22.3mm DM-M-WF1-26
2025年8月16日 恵栽園マット@500 2齢
2025年12月5日 羽化
♀⑭21.3mm DM-M-WF1-30
2025年8月16日 恵栽園マット@500 3齢×2頭
2025年10月24日 羽化
3-2.タナトラジャ産
♂①24.4mm DM-T-WF1-03

2025年8月16日 恵栽園マット@500 2齢
2025年12月9日 羽化
♂②24.5mm DM-T-WF1-09

2025年8月16日 恵栽園オオヒラタケ@800 2齢×2頭
2025年12月8日 羽化確認
♂③23.8mm DM-T-WF1-10

2025年8月16日 恵栽園オオヒラタケ@800 2齢×2頭
2025年12月8日 羽化
♂④24.2mm DM-T-WF1-11
2025年8月17日 恵栽園オオヒラタケ@800 2齢×2頭
2025年12月8日 羽化確認
♂⑤24.4mm DM-T-WF1-13

2025年8月16日 恵栽園オオヒラタケ@800 2齢×2頭
2025年12月8日 羽化確認
♂⑥23.8mm DM-T-WF1-14

2025年8月16日 恵栽園オオヒラタケ@800 2齢×2頭
2025年12月8日 羽化確認
♂⑦23.5mm DM-T-WF1-15

2025年8月16日 恵栽園オオヒラタケ@800 3齢×2頭
2025年11月8日 羽化
♂⑧22.8mm DM-T-WF1-16

2025年8月16日 恵栽園オオヒラタケ@800 3齢×2頭
2025年12月29日 羽化
♂⑨23.3mm DM-T-WF1-17

2025年8月16日 恵栽園オオヒラタケ@800 3齢×2頭
2025年12月8日 羽化確認
♂⑩23.8mm DM-T-WF1-19

2025年8月16日 恵栽園マット@500 2齢
2025年11月18日 羽化
♂⑪23.9mm DM-T-WF1-22

2025年8月16日 恵栽園マット@500 3齢
2025年11月11日 羽化
♂⑫24.0mm DM-T-WF1-23

2025年8月16日 恵栽園マット@500 3齢
2025年11月11日 羽化
♂⑬24.3mm DM-T-WF1-24
2025年8月17日 恵栽園マット@500 3齢×2頭
2025年11月4日 羽化確認
♂⑭23.2mm DM-T-WF1-25
2025年8月17日 恵栽園マット@500 3齢×2頭
2025年11月4日 羽化確認
♂⑮23.7mm DM-T-WF1-26

2025年8月17日 恵栽園マット@500 3齢×2頭
2025年11月8日 羽化確認
♂⑯23.3mm DM-T-WF1-X01
2025年8月17日 恵栽園マット@500 3齢
2025年12月9日 羽化確認
♂⑰24.7mm DM-T-WF1-X02

2025年8月17日 恵栽園マット@500 3齢
2025年11月24日 羽化確認
♂⑱24.4mm DM-T-WF1-X03

2025年8月17日 恵栽園マット@500 3齢
2025年11月8日 羽化
♂⑲23.4mm DM-T-WF1-X04

2025年8月17日 恵栽園マット@500 3齢
2025年11月24日 羽化

♀①21.6mm DM-T-WF1-01
2025年8月16日 恵栽園マット@500 2齢
2025年12月9日 羽化確認
♀②22.1mm DM-T-WF1-02
2025年8月16日 恵栽園マット@500 2齢
2025年12月29日 羽化確認
♀③21.9mm DM-T-WF1-04
2025年8月16日 恵栽園マット@500 2齢
2026年1月27日 羽化確認
♀④21.2mm DM-T-WF1-20
2025年8月17日 恵栽園マット@500 2齢
2025年12月29日 羽化確認
♀⑤21.3mm DM-T-WF1-21
2025年8月16日 恵栽園マット@500 3齢
2025年11月9日 羽化
♀⑥20.4mm DM-T-WF1-27
2025年8月17日 恵栽園マット@500 3齢×2頭
2025年11月8日 羽化確認
3-3.産地間形態比較
右:ママサ産
左:タナトラジャ産
両産地10個体くらい検してます。


う~~~ん、何が違うんだ。

ママサ産の方が内歯の幅が広いような気もするが…個体差?


形態比較する意味あんのかこれ??
3-4.産地間サイズ比較
なんとな~くママサ産の方が大きくなったような気がするので比較してみました。

♂のみピックアップ。
平均サイズの時点でだいぶ相違があるように思いますが、果たして本当に「2産地間でサイズに差がある」と言っていいのでしょうか。マン・ホイットニーのU検定を用いて検証していきます。

有意水準1%で2産地間は有意にサイズ差があるようです。こんなにはっきりと差が出ると思ってなかったのでびっくりしました…。しかし、サイズ差に影響している要素は産地だけなのでしょうか。エサおよび投入時期でサイズ差が出るかについても検証していきます。
棄却限界値の検定表は検索すれば出てくるから調べてみてね。


以上のことから、エサによるサイズ差があるとはいえない、有意水準5%で投入時期によるサイズ差があるといえることがわかりました。投入時期もサイズに影響があるようですが、産地差の方が効果量が大きいため、産地の方がサイズに影響を出しているといえるでしょう。投入時期に関しては黙って若齢期にさっさと投入すればいいだけの話。
とはいえ、単にママサの方が当たり♀、タナトラジャの方が外れ♀だったということも考えられますので、元も子もない話ですが「ママサの方がでかくなる!!!」と結論付けるのは早計かなと思います。両産地n=1ですからね…。この項の内容は、もしかしたらママサ産の方がでかくなるかも???くらいの参考程度に留めておいてください。
4.所感

累代飼育自体はサビクワガタの中でもトップクラスに容易であるように感じました。産卵環境を選ばず多産で、飼育温度にうるさくなく、マットでも菌糸でもそれなりのサイズで羽化してきてくれると思います。
逆に、ジェネラリスト過ぎて大型化に適した飼育方法を絞ることが難しいとも言えます。今世代の内容だけでは、エサ、飼育温度その他本種に適した条件はよくわかりませんでした。今まで飼育してきたサビクワガタの中で一番掴みどころがないです。

さすがに30ミリは厳しいかもしれませんが、25~26ミリくらいが天井とは思えないのでさらなる大型を目指したいです。若齢投入すればさすがにもっと伸びる…はず。タナトラジャ産は…今世代きりで撤退します;;ノ"