※※注意※※
この記事はハイブリッドの作成を推奨する記事ではありません。あくまで検証として異種間交配を行っています。命に対する責任を自己完結できない方は、くれぐれも面白半分でマネしないようお願い申し上げます。
1.はじめに
2022年某日…
へぇ~~~、ノズノコギリって長歯おるんや~~~知らんかったな~~~
そんなわけねぇじゃん!!!
(Cv. 松岡修造)
・頭楯の形状がノズノコギリと異なる
・眼縁突起がノズノコギリにしては長すぎる
・体形がノズノコギリにしては細すぎる
・前胸側縁は膨らまずノズノコギリの特徴に合致しない
・内歯の位置がノズノコギリにしては下がり気味
・大腮基部に2つ隆起が出るのはフランシスノコギリの特徴
以上の特徴から、当該個体はノズノコギリクワガタ(Prosopocoilus nozui)ではなく、ノズノコギリクワガタとフランシスノコギリクワガタ(Prosopocoilus francisi)のハイブリッドである可能性が高いと判断しました(オタク特有の早口)。大図鑑やビークワ79号など資料をお持ちの方は、是非お手元でご覧になっていただければと思います。
ノズノコギリとフランシスノコギリはかなり近縁と思われますので、交雑できても不思議ではありません。
参考:フランシスノコギリ(左)とノズノコギリ(右)
もうちょっといい比較写真があればいいのですが、こいつらは動き回るのでまともに写真を撮らせてもらえません…
とはいえ、ハイブリッドと断言することもできないのは事実です。そもそも、いくら近縁とはいえノズノコギリとフランシスノコギリは交雑するのか、という点について報告されているのを少なくとも私は見たことがありません。
じゃあ自分で試せばいっか♪
ちょうど手元にノズもフランシスもいるしね♪
というわけで、もやもやを解消するため交雑実験を実行することにしました。
2.産卵セット
2022年4月20日、都合よく余っていたノズノコギリの♂とフランシスノコギリの♀でペアリング。
翌日には交尾を確認。
交尾も確認したので早速セット。材埋め込みの普通のセットです。
3.割出
セットしてからおよそ1か月後、卵が見えました。丸く膨らんでおり、孵化しそうに見えますが果たして…。
2022年7月11日、7頭と少ないながらも幼虫を得ることができました!!!
羽化が楽しみすぎます。
恵栽園マット@パン屋さんに全頭まとめて投入。
4.♀羽化
2022年10月29日、♀の羽化を確認。我慢できずに掘り出してしまいました。
おっ。
体形は細めで、かなりフランシスノコギリ寄りの個体が羽化しました(ノズノコギリはより小型で丸っこい形をしています)。
テネラルとはいえ、赤みのある体色もフランシスノコギリらしさを助長しています。
♂はどうなるのか、楽しみでなりません。
5.♂羽化
♀の羽化からおよそ1か月後の2022年11月28日、ついに♂の羽化を確認!
こちらも我慢できずに掘り出し。いったいどんな形をしているのでしょうか。
これは!!!
頭楯、眼縁突起ともにノズとフランシスの中間的な特徴を有しています。まぎれもないハイブリッドです。
体形は細身ではありますが、フランシスにしてはがっしりとしており、かなり変わっています。
大腮の形状は明らかにフランシスのそれと異なります。同じくらいの体格のフランシスノコギリはよりアゴが伸びます。
テネラルということで赤みが強く、前胸の紋も合わさりノズらしさが際立つ体色です。固まってからどの程度赤みが残るのか楽しみです。ノズでも黒っぽいのはいますけどね。
6.羽化個体紹介
2♂5♀が羽化。もう少し♂が多ければよりよい検証になったと思いますが、贅沢は言えませんね。
♂
31.1ミリ。固まってからフランシスノコギリに近い体色になりましたが、それでもかなり赤みが残りました。脚の質感はフランシスノコギリによく似ています。
29.8ミリ。こちらの個体はさらに赤みが強く、ノズノコギリらしさがあります。
ちんぽ丸出し
♀
不全が多くて泣いてしまった
全体的にフランシスノコギリらしさがありますが、フランシスノコギリにしては少し丸っこいように思います。とはいえ前置きなしで目の前に出されたら「フランシスノコギリ?」と言ってしまいそうです…。
体長は19ミリ前後で、以前フランシスノコギリが20ミリ前後、ノズノコギリが18ミリ前後ほどだったことを踏まえると、ちょうど中間のサイズで羽化してくれたことになります。
後胸腹板はすべての個体で赤みが強く、この点もフランシスノコギリらしさが際立ちました。
参考:フランシスノコギリ♀
参考:ノズノコギリ♀
7.まとめ
ノズノコギリ♂×フランシスノコギリ♀で交雑させると、フランシスノコギリ寄りにはなるものの、ハイブリッドらしい個体が羽化するという結果になりました。ノズノコギリとフランシスノコギリが交雑するという結果が得られただけでも収穫としては十分です。
というわけで、ノズノコギリを入手される際は実はハイブリッドだった…ということがないように、個体の特徴をよ~~~く見て購入していただければと思います。
あらためて冒頭の個体を見ると、今回羽化した個体とは形状が異なるように思います。雌雄の組み合わせが異なるか、クォーターなのではないかと推測しています。
それこそ本当はフランシスノコギリ♂×ノズノコギリ♀も試していたのですが、残念ながら産卵しませんでした。ついでに純系のフランシスノコギリも絶えました。今回の検証だけではもやもやが完全に晴れることはなかったので、機会があればリトライしてみようと思います。
また、せっかくなので今回のハイブリッドからF2が採れるかも検証するつもりです。こうご期待!
8.後始末
人為的に作成されたハイブリッドというのは、本来存在してはいけないものだと思っています。生み出してしまった命の始末は己でつける必要があります。生体販売などもってのほかです。
完品はF2検証に使うため残しておくとして、問題はB品…。標本価値もないに等しいでしょう。というわけで
命を頂きます。
美味しそうな飴色に揚がりました♪
味付けは塩のみ。
それでは
実☆食
まずは♀から。…サクッという心地よい触感、それでいてスナック菓子のように一瞬で消えることはありません。二噛みほどでほんのりとナッツのような風味が口に広がります。美味しい…。また、塩が最高にいいスパイスです。これ以上の調味料が思い浮かびません。
♂も♀と大きく味が変わることはありませんが、大アゴがある分より長く食感を楽しむことができます。美味しい。クワガタを食べるならやはり未後食に限りますね。
フセツ1本残さず頂けました。ごちそうさまでした。美味かった!
おしまい