ヒラズツツサイカブト(カンデーゼムナクボカブト)
Ceratoryctoderus candezei (Snellen Van vollenhoven, 1866)
スラウェシ島 パロロ・パル WD
うちでは珍しくカブトムシの記事でございます。
サイカブトのなかまらしく脚(特に跗節)が短い。いかにも穿孔性が強そうな印象。
背中の毛のさわり心地が…イイですねぇ…
ケラトリクトデルス・キャンデゼイ
恐竜みたいな名前でめっちゃかっこよくないですか???
♀。平べったい。平頭筒とは言い得て妙。
近縁種にツヤヒラズツツサイカブト(C. arumatus)がおり、本種に混ざって入ってきてるとかきてないとか。
- 1.2021年8月6日 産卵セット
- 2.2021年9月3日 割出
- 3.2021年10月20日 二回目割出
- 4.2021年10月20日 幼虫ボトル投入
- 5.2021年11月6日 三回目割出
- 6.2022年1月12日 マット交換
- 7.2022年3月24日 マット交換&割りカス処理
- 8.2022年5月2日 蛹化開始
- 9.2022年6月9日 羽化開始、そして…
- 10.羽化個体紹介
- 11.所感
- 12.おまけ 形態比較
1.2021年8月6日 産卵セット
♀を殺すこともまずないだろうということで♂♀いっしょにぶち込み。
Nマットにそこそこ黒土を混ぜ、いつもより多めに加水。ネット上の数少ない情報では水分多めが好結果につながっているようです。
黒土の保水力というか、粘り気がとてもいい感じ。黒っぽさと艶が風呂に入っていないオタクの髪によく似ており、また粘り気がオタクの口元そっくりなので、こんな感じのマットをオタクマットと呼んでいます
穿孔力が高いとみてマットは固詰め。
温度は24~25℃程度。
2.2021年9月3日 割出
無事10個ほど卵を得ることができました。真珠みたいでとてもきれいなのですが、画像だと伝わらないのが残念…
潰された卵もそこそこ見られたため、数を稼ぐならまめに採卵すべきかもしれません。
♂はすぐ死んだようで干からびてましたが♀は健在。というわけで再セット。
3.2021年10月20日 二回目割出
6卵2幼虫。潰したのか産んでないのか…。
幼虫飼育が未知数のため、母数を確保するべく♀にはもういっぺん頑張ってもらいます。
4.2021年10月20日 幼虫ボトル投入
先に割り出した分は既に孵化し計7頭。かなり活発で、背面で移動する様はまるでカナブン系の幼虫のよう。
エサは800ボトルにDOS完全発酵マットと少量黒土混ぜたもの。
後日無事潜ったことを確認したので一安心。
5.2021年11月6日 三回目割出
♀死んどるだろうと思ってひっくり返したところ4卵回収。20~21℃くらいの場所に置いていたがまさか産んでるとは…
♀は既に軽いしボロボロ。標本にはできないんで死ぬまでこき使います。
6.2022年1月12日 マット交換
先発組のマット交換を行いました。1頭落ちていたものの、残る6頭は生存を確認でき一安心。
まだまだ幼虫を続けるだろうと思われる段階ですが、他種と比較して幼虫が非常に黄色いです。
7.2022年3月24日 マット交換&割りカス処理
2&3回目に採卵した幼虫たちのマット交換。大半がUマットで飼育した個体。DOS完全発酵と比較すると全体的に体重の乗りがよかったです。
しかしながら小さい黒点が見受けられ少し心配。幼虫はどの個体も元気いっぱいなので何とか逃げ切り蛹化してほしいところ。
ついでにすっかり忘れていた割りカスの処理。とうの昔に♀は死んでいたようですが、なんと幼虫が2頭出てきてびっくり。
マットの状態が酷かったせいかこちらも黒点がみられましたが、生存していただけでも大したもんです。
8.2022年5月2日 蛹化開始
最初の1頭が蛹化。角が目立たないため♀と思われます。孵化後8ヶ月程度で蛹化なのでカブトムシとしてはまずまず早い方なのではないでしょうか。
他の幼虫たちも後を追うように続々と蛹室を作り始めました。
♂の蛹。面白い形してますね。
9.2022年6月9日 羽化開始、そして…
まずは♀が羽化。我が家ではカブトムシはほぼいないので、♀でも羽化の様子を見れるのは楽しいです。
♂も続きます。
と、羽化してきた♂を眺めていると違和感が…。
やけに細く、胸角も発達している…。
これは?と思い調べてみると、やはりツヤヒラズツツサイカブト(Ceratoryctoderus armatus)でした。
C. armatus
C. candezei
全然違いますね。思いがけず♀ガチャに当たったようです…!
形態的特徴の差異(素人見解)は最後に改めてまとめます。
10.羽化個体紹介
体長は頭角で計測。クワガタと比べて計測が難しいので、サイズは参考程度。
♂①49.6mm
CAWF1-01
2021年9月3日 採卵
2022年1月12日 マット交換 13.1g
2022年6月28日 羽化
蛹体重12.0g
♂②46.3mm
CAWF1-02
2021年9月3日 採卵
2022年1月12日 マット交換 12.5g
2022年7月9日 羽化
蛹体重11.3g
♂③44.5mm
CAWF1-04
2021年9月3日 採卵
2022年1月12日 マット交換 11.0g
2022年6月21日 羽化
蛹10.2g
♂④41.1mm
CAWF1-06
2021年9月3日 採卵
2022年1月12日 マット交換 9.5g
2022年6月26日 羽化
蛹体重8.6g
♂⑤41.8mm
CAWF1-07
2021年9月3日 採卵
2022年1月12日 マット交換
2022年6月27日 羽化
データ紛失したけどチビなのでどうでもいいや
♂⑥54.4mm
CAWF1-08
2021年10月20日 採卵
2021年11月22日 Uマット800
2022年3月24日 マット交換 16.5g
2022年9月27日 羽化
蛹体重16.6g
最大個体。
♂⑦46.0mm
CAWF1-10
2021年10月20日 採卵
2021年11月22日 Uマット800
2022年3月24日 マット交換 14.8g
2022年7月29日 羽化
蛹体重12.4g
♂⑧51.6mm
CAWF1-12
2021年10月20日 採卵
2021年11月22日 Uマット800
2022年3月24日 マット交換 18.2g
2022年8月23日 羽化
蛹体重15.3g
形は一番カッコいいかもしれない。
♂⑨53.0mm
CAWF1-19
2021年11月6日 採卵
2021年12月15日 Uマット800
2022年3月24日 マット交換 9.4g
2022年10月17日 羽化
蛹体長15.8g
♂⑩
CAWF1-21
2022年3月24日 割出 Uマット800
蛹体重14.0g
♀①36.5mm
CAWF1-05
2021年9月3日 採卵
2022年1月12日 マット交換
2022年6月9日 羽化
データ紛失したけど♀だしどうでもいいや
♀②41.8mm
CAWF1-09
2021年10月20日 採卵
2021年11月22日 Uマット800
2022年3月24日 マット交換 14.1g
2022年7月5日 羽化
蛹体重9.3g
♀③38.4mm
CAWF1-11
2021年10月20日 採卵
2021年11月22日 Uマット800
2022年3月24日 マット交換 12.9g
2022年7月5日 羽化
蛹体重8.4g
♀④39.2mm
CAWF1-13
2021年10月20日 採卵
2021年11月22日 Uマット800
2022年3月24日 マット交換 12.8g
2022年7月19日 羽化
蛹体重8.5g
♀⑤40.2mm
CAWF1-14
2021年10月20日 採卵
2021年11月22日 U+DOS完全800
2022年3月24日 マット交換 13.4g
2022年7月9日 羽化
蛹体重8.9g
♀⑥41.2mm
CAWF1-15
2021年10月20日 採卵
2021年11月22日 U+DOS完全800
2022年3月24日 マット交換
蛹体重9.2g
♀⑦41.5mm
CAWF1-16
2021年11月6日 採卵
2021年12月15日 Uマット800
2022年3月24日 マット交換 10.4g
2022年9月5日 羽化確認
蛹体重11.2g
♀⑧41.5mm
CAWF1-17
2021年11月6日 採卵
2021年12月15日 Uマット800
2022年3月24日 マット交換 10.1g
2022年8月24日 羽化
蛹体重9.7g
♀⑨39.7mm
CAWF1-18
2021年11月6日 採卵
2021年12月15日 Uマット800
2022年3月24日 マット交換 9.2g
2022年9月5日 羽化確認
蛹体重10.0g
11.所感
とにかく♀ガチャが当たったのが嬉しかったです。冒頭のコメントは完全なフラグでしたね。よく伸びた頭角と前方に突き出した胸角が本当にカッコいい…。国内でツヤヒラズ名義で生体流通したことはないのではないでしょうか。
ヒラズツツの♂と同居セットしたので一抹の不安がよぎりましたが、羽化個体の特徴を見る限り杞憂だったみたいで安心です。すぐ干からびたんやろなぁ
産卵~羽化までこれと言って難しくは感じませんでした。巷で言われているような産卵のクセも感じず、幼虫も割と強健な印象が強かったため、個人的には国産カブトよりも簡単なんじゃないかと思ってしまいました(カブト苦手人間並感)。特に、黒い痣が出てしまった幼虫が元気に成長した点で本種の生命力の強さを感じました。
幼虫飼育は安全策として無難なエサを用いましたが、より高栄養なマットでも適合するのではないかと思います。でも今の部屋で臭いマット使いたくないんですよね、どうしたものか…
容器サイズも800では手狭に感じたので、1400を使うことも視野に入れていこうかと思います。
形状の個体差が激しすぎる+体長計測が難しいため、蛹体重は全くアテになりませんでした。
最大個体は54ミリとまだまだのサイズ。55超えたらべくわに投げようと思っていたのですが、お預けになりました。次サイクルで頑張ります。
血の入れ替えしようと思ったらヒラズガチャをひたすら引き続けないといけないらしいです。クソゲーかな?
12.おまけ 形態比較
ヒラズツツサイカブト(C. candezei)とツヤヒラズツツサイカブト(C. armatus)は外見がよく似ており、野外品は混ざって入ってきているようです。実際私も最初はヒラズツツサイカブトとして入手し、羽化するまで全く気づきませんでしたので…
一素人の個人的な見解ではありますが、ヒラズガチャを引こうという変態諸兄の参考になればということで、ヒラズーツヤヒラズの形態的差異をまとめておきます。
♂
ヒラズ
・体形は幅広い
・胸角は裁断状で突き出さない
・胸部の凹部外縁は四角形寄りの形状
・頭角は短く、先端中央で強く湾入する
ツヤヒラズ
・体形は比較的細長い
・胸角は強く突き出す
・胸部の凹部外縁は中央にかけてすぼみやすい
・頭角は長く、先端中央は緩やかに弧を描き浅く凹む
・頭角は中央で隆起する
小型個体でも胸角の突き出しなどは顕著にみられたので、♂の見分けはそれほど難しくないと思います。
♀
ヒラズ
・胸部~小楯板の点刻は粗く、小楯板上の点刻は密
・前脚の形状(後述)
ツヤヒラズ
・胸部~小楯板の点刻は細かく、小楯板上の点刻はまばら
・前脚の形状(後述)
♀は正直ここが違う!と断言することが難しいです。ただ、前脚脛節に以下のような違いが見られたような気がしました。
字汚すぎて草
ヒラズの方は野外品のため、擦れた可能性が否めないのが気がかりですが…
野外品を買われた際の参考になれば幸いです。
あぁ記載文が読みたいなぁ!