キンスジコガネ
Mimela holosericea japonica Machatschke, 1952
1.はじめに
隠れた美麗種としてコアな人気がある(らしい)種類。野外での個体数はそれほど多くないようで、灯火採集をしていて採れたら嬉しいという声をちらほら目にします。
実際、ラメ入りのような光沢はため息が出るほど美しい。ファンになってしまうのも納得でございます。
存在を知ったのは2020年頃。ネット上では少数ながら飼育記事があり、飼育可能なことを知ってから採ってみたいなぁと思っていました(ミーハー飼育屋)。
最初の出会いはパーツのみ。2021年7月17日、岩泉町。
1か月後に知り合いに連れていっていただいたライトトラップにて初採集。ほかのコガネムシと雰囲気が大きく異なるためすぐにわかりました。
ただ、残念ながらこの時採集したのは♂。灯火に飛来するのは圧倒的に♀が多数だそうですが、どうして…。
当時の私は諦めきれずに産卵セット組んでたみたいです。
年は明けて2022年、知人より灯火で採集した個体を2頭譲っていただきました。ありがたい限りです。自分で採集したワケじゃないのか、というツッコミは無視します
触角片状部が小さく、脛節がオレンジ色なのでおそらく♀でしょう(♂は触角片状部が大きく脛節が赤紫色)。
持ち腹期待で飼育していきます。
2.飼育記
2-1.2022年7月19日 産卵セット
寿命の長い虫ではないと思うのですぐにセット。やっすいマットをボトルに軽く詰めただけ。エサはネットの記事で見かけたカラマツをチョイス。落葉樹のため、比較的葉に含まれる防御物質が少ないと考えられます。そういう意味では、先駆者の選択は理にかなっているといえるかもしれません。
ずいぶん美味しそうに食べています。よく見ると腹面に毛がたくさん生えており、もふもふしていて可愛いらしくもあります。この子が、この世に舞い降りた天使なんだ
2-2.2022年7月27日 採卵
たったの8日間で無数の卵が。国産カブトムシがかわいく見える産みっぷりです。
数えるのもめんどくさくなってきます。
そこへさらに追加便を賜りました。どうにでもなれぇ~
計6頭ほどいただきましたがすべて♀でした。
これはカラマツの枝だったものの慣れの果て。あまりに無惨…。
2-3.2022年8月7日 孵化
追加採卵。もうなにも言うまい…。
先に採卵した分は孵化を開始。おぞましい量が蠢いております。
当たり前ですが、幼虫形状はカブトムシともハナムグリとも大きく異なっています。普段飼育しない形状の幼虫なのできちんと羽化まで持っていけるか、いささか不安です。数多くてもバタバタ落ちるなんて話、カナブンなんかじゃよくありますからね。
2022年9月27日、孵化から2か月と経たず3齢幼虫が出現。畑耕してたら出てくる形。
数が多すぎて過密寄りの飼育となってしまいました。
2-4.2023年5月11日 蛹化
ほぼほったらかし状態で半分ほど落ちてしまいましたが、なんとか蛹が出現。
蛹は幼虫の頃の皮で綺麗に包まれています。ずいぶん器用ですね。少なくともスジコガネの系統はこんな感じで蛹化しそうな雰囲気があります。
ネット上では2年1化とも3年1化とも言われていますが、冬場に15℃を下回らないくらいの温度管理をして飼育すれば1年1化の個体が多数現れるようです。
2-5.2023年5月24日~ 羽化
待望の羽化。羽化したばかりなのに既にキラッキラ。宝石という形容がぴったり似合います。
羽化後3日もすればほぼ固まっています。脚の色が濃いので♂でしょう。
触角も大きいので間違いないですね。野外ではお目にかかる機会が少ない♂も、飼育するとあっさり得ることができます。みんなやろう!!!
あれだけ数がいれば当たり前ですが、きっちり雌雄揃ってくれました。
2-6.2023年6月~ 後食開始、F2へ
羽化後1週間ほどで後食を開始。クワガタのサイクルスパンに慣れていると、文字通り電光石火に感じます。
あらかわいい。
あらお盛ん。後食開始後2日もすれば交尾ばかりしていました。♂は交尾のし過ぎですぐにおっ死んだ模様
6月15日、1頭目が羽化してから全然日が経っていませんが、あまりに動きがいいので産卵セットを組みました。
はい産みました。
たった3日で数えきれないほど産卵していました。2♀使っているとはいえすごすぎる…。
卵は丸く膨らんでいるものも混ざっており、状態は良好そうです。実は飼育がめちゃくちゃ簡単な種類なのかも??
3.飼育方法まとめ
3-1.個体の入手
これがおそらく最難関。
採集を狙うなら、山間部でライトトラップを行うのが最も効果的と考えられます。時期は6~8月。ブナ帯であれば最高ですね。クワガタのついでに狙ってください。ライトに飛来する時間帯は薄暮の頃であることが多いようで、クワガタの飛来開始よりも前にやってくることが多いみたいです。ライトを持っていなければ街灯を見て回るのがいいでしょう。幼虫の採集方法は不明。
購入する場合は…というかそもそもショップでは売っていません。店頭販売されることはまずないでしょう。採集が強めのお店にお願いして入手を狙うか、個人の採集屋さんに依頼することになると思います。あと私がたまにヤフオクに出しています。買ってください。
3-2.成虫飼育
第二の難関がこちら。エサの入手が課題となります。でもそれだけ。
成虫はほぼ針葉樹の葉しか摂食しないため、安定して針葉樹の葉を得るルート確保が重要です。田舎であれば容易いですが、都会だと結構大変かも?私は前述の通りカラマツをよく与えていますが、アカマツやスギを摂食した事例もあるようですので、針葉樹であれば何でもいいと思います。
成虫は争うことはないので多頭飼育可能ですが、♂が交尾のし過ぎで早死にする可能性が高まるので、その点を考慮して時に個別飼育も併用していくといいでしょう。
また、山間部の虫であるため極端な降温は避けるべきと思います。
新成虫は羽化後1週間もすれば後食を始めるので、餓死に注意してください。
3-3.幼虫飼育
コガネムシ類の幼虫は植物の根を与える必要があるものも多いようですが、本種は発酵マットのみで羽化まで持っていくことができました。あくまで感覚の話になりますが、発酵の進み過ぎていないものが適しているように思います。
マットの湿度は高すぎない方が調子がよさそうです。ただし、蛹化の近づく3月~5月頃は、蛹化を促すため少し加水したマットを詰めた容器に移すといいと思います。
幼虫はかなりの個体が落ちます。今回は430ccカップに10頭など過密飼育をしてしまったせいもありますが、そもそも幼虫が強健な種類ではないと思います。幸い産卵数は非常に多いので、とにかく数を抱えるのが有効でしょう。
また、記事執筆時点で蛹化が遠そうな個体もいるため、エサの状態や管理温度次第で2年1化などにずれ込むこともありそうです。
4.所感
なんとか羽化までこぎつけることができ安心しました。この輝きは何度見てもたまりません。かわいいし綺麗なんて最高過ぎませんか??
野外での個体数が多くないといわれる割には、飼育が容易な種類であったように思います。とにかく多産でポコポコ増えますし、他のコガネムシ類ほど幼虫飼育のクセもないように感じました。初めてコガネムシを飼育するという方でも、ある程度安心して飼育をスタートできるのではないかと思います。
次回はより生存率を上げて、大量の成虫がわちゃわちゃしている様子を拝めるようにしたいですね。まずはF2の卵が無事に孵化することを祈ります。